Works in Progress: 星間戦争(17)2006年02月27日 05:59

第3章 囚われの日々

2台目の戦闘機械が現れたために、われわれはのぞき穴から食器洗い室へと戻らざるを得なくなった。火星人が戦闘機械の高みから、障壁のうしろにいるわれわれを見下ろしはしないかと恐れたのである。後になるとそれほど連中の目を恐れなくなったが、それは戸外のまぶしい陽光に慣らされた目にはわれわれの隠れ家などぽっかりと空いた暗闇にしか見えないはずだとわかってきたからだった。だが最初のうちは少しでも連中の近づいてくる気配がしたら心臓をどきどきさせながら食器洗い室へ逃げ戻ったものである。だが危険を招き寄せるおそれがあっても、のぞき見の魅力にはふたりとも逆らえなかった。今にして思えば不思議なのだが、われわれは餓えと、さらにはより恐ろしい死という計り知れない危険にさらされていたにもかかわらず、一目外をみようとして激しく争った。こっけいなありさまで音を立てぬよう先を争って調理室を横切り、わずか数インチしか外から隔たっていないところで殴り合い、互いに押しのけたり蹴飛ばしたりしていたのである。

実のところわれわれは気質にしても思考や行動の習慣にしてもまったく性が合わず、危険と孤独のせいでますますそれが強まっていたのだ。すでにハリフォードで私は副牧師の絶望的な嘆きやら愚かしく硬直した精神を憎むようになっていた。

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_ CHORALIS - 2006年02月28日 06:27

実のところわれわれは性質にしても思考や行動の習慣にしてもまったく相性が悪く、危機と孤独のためにそれがさらに強められていた。ハリフォードですでに私は副牧師の頼りなげに絶