アントロポゾフィー胎生学(70)2011年04月28日 13:45

7.5 意識、行動と決定論

動物は、非常に特殊分化しています。
特殊化は形態学的および機能的なレベルで起こり、これらのレベルは互いに関連しています。
このような特殊化の結果は、ふたつの面を持っています。
一方で、動物は認知と反応のためのユニークで専門的な技能を備えています。
他方で、動物が発達における可能性を失っていることは明らかです。
動物はその特技においては並ぶものがありませんが、それと同時にたったひとつの生き方しかできないよう運命づけられています。
生物が高度に特殊化してしまうと、そのからだを多様な機能のために用いる可能性は失われてしまいます。
このような特殊化は器械の特殊化になぞらえることができるでしょう。
器械的な特殊化においては、主に感覚器、体幹と四肢が特異的に発達します。
認知と反応は、形態学と生理学によってほぼ決定されます。
動物がどのように本能に従って行動するかを知れば、彼らの行動はきわめて予測可能なmのとなります。
本能は、「認知と反応の決定論」と特徴付けることができます。
人間のからだは特殊化した器械的な機能を果たす道具ではありません。
感覚器、顎、歯、手と足は、においを嗅ぐ、噛む、つかむ、走るといったほんのわずかの限られた機能にしか適合していないわけではありません。
人間の行動は、必ずしも予測可能であるというわけではありません。
人間が特別な存在なのは、まさに予測が不可能だからです。
人間の創造力は、最も顕著です。
この創造力の特徴は、行動の自由にあります。
人間は、「欲することは何でも行う」ことができます。
動物は、「可能なことをしなければ」なりません。
人間は「観察したいものを観察することを学ぶ」ことができますが、動物は「彼らに適したものを観察しなければなりません」。
人間の形態学の観察から Louis Bolk は、人体が器械的な特殊化を回避するユニークな傾向を示すという結論に達しました。
進行中の、また更なる発達の可能性は胎生学的状態に例えることができます。
胚は、発達と特殊化の最も大きな可能性を有しています。
Bolk によれば、人間の形態学は成人期においてさえ明らかに継続的な発達の可能性を示しており、それは人体の形状に内在しているものなのです。
つまり、人体は、発生の初期相に対応する形状を有しています。
初期の段階では動物の四肢には5本の指があります。
動物の発生の経過で、一つ以上の部分が痕跡的になることがあります。
ライオンのような多くの肉食獣では4本の指が発達して、かぎ爪に特殊化します。
ウマのような奇蹄目の動物では、1本の指だけが完全に発達し、特殊化して蹄になりますが、他の指は痕跡的です(図7.1)。
人間の生理学と心理学からは、「特殊化されていない」という側面が身体の形態学的な問題にとどまらないことが明らかです。
人間の生理学と心理学は、豊かな多様性と決定論の驚くべき欠如を示しています。
それでも、ヒトが高度に特殊化されていることは否定できません。
進化は自然的および文化的側面に分けることができます。
文化のレベルにおいて、ヒトの進化はその盛りにあります。
自然な進化への刺激は、生物学的レベルにおける変態でした。
文化面の進化においても、変態の可能性は発達の基礎となります。
自然界と同様、知識と社会生活の領域においても発達のために変態が不可欠であるのはめざましいことです。
ヒトは、変態の中心をその組織の一部として「内在化」しました。
心理的および精神的能力は、人間の特殊化を特徴づけています。
この能力は「多能」生物をつくりだしますが、その生物ときわめて特殊化した動物とは適合しません。
従って、ヒトの生物学的地位は、決定論から自由でいられる可能性を示唆しています。
しかしながら自由は内的生活においてのみ実現可能であり、そこでは自己洞察から変態が導かれます。
生涯継続的な発達を遂げる可能性があるのはヒトだけです。
ヒトだけが決定論の力に打ち勝ち、自由の領域に入ることができるのです。