アントロポゾフィー胎生学(61)2011年04月02日 16:44

6.2.2 ゲーテ的側面

折りたたみと原腸形成は身体の「動物化」(第5.2.2.章を参照)の典型的な特徴と認められました。
躯幹の展開プロセスは、図6.1および6.2に示したように直立性をもたらします。
人間において、直立の形態は、展開により完全に実現されます。
この現象の特徴は、その結果として以下の関節が同じ前額面内に位置していることにあります:
環椎後頭関節、肩関節、股関節、膝関節および足関節。
比較解剖学は、展開のプロセス、肢発達のプロセスおよびヒトの脳の発達が互いに関連していることを示しています。
展開は直立姿勢をもたらし、特徴的なヒトの四肢の発達を促します。
すなわち、四肢の基本的な(instrumentalでない)構造および人間の脳の発達は、他に類をみない脳組織の量と質をもたらします。
こうした現象はいずれも人間の発達において非常に特異的かつユニークなものと思われます。
人間だけが、これらの形態学的な特徴を生涯保つことができるのです。
この形態学的な分化と並んで、人間の行動は決定論に縛られないものとなっていますが、これについては第7.5章で述べます。
直立した身体の形状は、まっすぐに立つという人間の特徴的な能力および本能的行動から自由でありうるという可能性の現れとして理解することができます。

アントロポゾフィー胎生学(62)2011年04月04日 16:53

7章 発生における4つのプロセスの特徴
様々な胎生学的相の動的な特性

7.1 はじめに

我々は本書の序文において、
「我々はふたつの目標のために努力しました。第一に、形態学における「代替的枠組み」を示すこと、そして第二に、形態学における動的な性質を特徴付ける代替的枠組みが形態学的事実の新たな解釈をもたらすことを示すことです。」と述べました。
この章ではこれらの動的な特質について、より詳細に論じます。
ここで我々が明らかにしようとしているのは、動的な観点によって胚の発生における多くの事実がひとつの動的なプロセスに属していることを理解する可能性が開けてくるということです。
これらの動的なプロセスは、特定の期間内に作用します。
この特定の期間において、胎児はその発生の特別な相を実現するのです。
人間の胎生学の初期発生では4つの特徴的な相が示され、それぞれ発生の第1、2、3、および4週の初め頃に始まります(第3,4,5,6章を参照のこと)。
各相は、特別な形態学的および生理的プロセスの結果です。
章3,4,5および6章で述べてきた形態学的な発生について、ここではゲーテ的な観点から再び検討を加えます。
現象学者Louis Bolkは、「マクロスコープ」を用いるよう助言してくれました。
その際に彼は、生物学的事実を整合的に理解するには単なる顕微鏡以上のものが必要であることを指摘しました。
顕微鏡によって、我々は多くの刺激的な詳細を発見することができました。
この方法が内在している欠点は、事実の統一性と相互の関係性を見てとることができないということです。
Louis Bolkの「マクロスコープ」は、この統一性と相互関係を見いだすためのよりよい道具です。
マクロスコープとは、もちろん、我々の思考プロセスのことです。
マクロスコープを用いる技術のひとつは比較研究法です。
自然の異なる界を比較し、またそれぞれの住人の行動および彼らが従う法則を比較することにより、整合的な概観に到達する可能性が得られます。

アントロポゾフィー胎生学(63)2011年04月07日 17:12

7.2 個々の発達の身体的状態

7.2.1 生物学における身体的物質

すべての生きている生物には、身体的なアイデンティティがあります。
最も小さい単細胞の生物も、最も複雑な多細胞生物も、めいめいが自らの身体的な境界と身体的な物質を持っています。
物質界の中で、生物は、それ自身の物質を含む一種の飛び地を形成します。
生理的プロセスはこれらの物質、その濃度と組成に影響して、物質が関与するプロセスを決定します。
身体的な物質が生物から取り出されると、それは再び世界の一部となり、無機的な自然の物理法則に従います。
これらの法則によって、この物質が新しい生物になることはありません。
このことはつまり、この物質が単なる死んだ無機物質の相に「戻る」ことを意味します。
無機的な自然の法則は、生物の法則とは異なっています。
この理由から、物質はそれを囲む無機的な世界にあっては、有機的世界とは異なる脈絡で現れます。
物理的な状態と物理的空間の違いを区別することが重要です。
身体的な物質は、常に(第3.2.2章を参照)物理的な存在のための条件であり必要物です。
身体的な物質は、もちろん、空間内に存在する物体です。
しかしながら、空間内に物体があるからといって、それはその物体が空間内における方向性を有しているという意味にはなりません。
石には、前後も左右もないのです。
良質の水晶でさえも空間内における方向は持っておらず、それには上も下もありません。
我々は、空間内で好きな向きにそれを置くことができます。